◯*183*◯ ページ33
「どうした？」
「え？」
「いや、思いつめた顔してるから」
翔ちゃんの綺麗な顔が、その場に胡座をかいて座り込んだ俺の顔を覗き込んでいる。
…なんでも見通すなっつーの。
俺だって、俺だって
泉のこと、手放したくなったんだから。
俺、あいつのことすげえ愛してたんだから。
「ラスボスが強くって」
「あ。ゲームの世界ね」
シャワーでも行こうかなあ、って立ち上がった翔ちゃんが手に持っていた厚い手帳から一枚の写真が
座っている俺の隣に、ヒラヒラと舞い落ちた。
なんの躊躇いもなく拾い上げたのに
思わず…戸惑った。
「…翔ちゃんこれ」
「あ、見ちゃった？」
それは、2人が別々の道を歩み始めた日に発売された雑誌に載っていた、
2人を引き裂くきっかけとなった写真だったからだ。
「皮肉だよなあ、2人で写ってる写真がこの写真一枚しかないなんて」
だけど、
悪夢。を見つめる翔ちゃんの目は、どこまでも穏やかだった。
「こんなにも美しく写ってる写真を…憎めるはずがないのに」
そこに写っているのは、
大雨の中、しゃがみこんでいるAさんと
彼女に傘を差し出す翔さん2人の
淡い恋の、全てだったんだ。
ああ、ああ、どうして。
どうして2人は。
思わず、視界が滲んだ。
「なにお前が泣きそうな顔してんの」
「…いや、色々思い出して」
恋を目の前にして、愛おしさを目の前にして
俺らは、どうすることもできなかったんだ。
ただ、もがいて、もがいて
届かない背中に、出ない声で叫ぶしかなかったんだ。
「Aさんとは…もう」
「会わないよ、一生」
なんて、なんて、切ないんだろう。
なんて、なんて、苦しいんだろう。
いつまで、俺たちを離してくれないんだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1270人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さとあす(プロフ) - はじめまして。切ない！そりてぐっときました。潤くんが幸せなのが、救いです。切ないけど、愛に溢れた作品ですね。大野さんの様に深い愛で愛されきってみたい。翔さんの様に深く繋がってみたい。素敵な作品に出会えました。 (2019年12月16日 21時) (
レス) id: d765155f44 (このIDを非表示/違反報告)
希乙羅 - はじめまして！一気読みささて頂きました。とても切なく、でも愛に溢れる作品でした。なんだか今は胸がいっぱいです。 (2017年7月31日 9時) (レス) id: 536b898312 (このIDを非表示/違反報告)
優樹(プロフ) - 一気に読ませもらいました！！最後の結末、私は好きです。続きが見たいような、そうでないようなかんじです。個人的にニノと泉ちゃんは戻って欲しかったです。次回作も楽しみに待ってます！！ (2017年3月12日 18時) (レス) id: 32818da651 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - お疲れさまでした…ありがとうございました。お話の内容が現在とシンクロしてしまって、複雑な気持ちで見届けました。ここでの主人公は"私"でしたが…くろーばーさんの世界観、好きです。次作も楽しみにしてます。 (2017年3月10日 0時) (レス) id: 68654e9a4b (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても切なく…涙が止まりませんでした(ToT) (2017年3月8日 23時) (レス) id: b4753fc97a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：くろーばー
| 作成日時：2017年2月9日 19時
