・ ページ9
「さあ皆！！新入りの登場だぞ」
新入り…？とその単語に疑問を覚えつつ足を一歩踏み入れると、そこにはいくつもの目がこちらを捉えていた。
「新入りって、イロニー家の子やん。本人の同意は得たんか？」
そう口を開いたのは、宰相の息子であるトントン。
また名家の子息か。…いや、彼だけではない。愁いを帯びた藍色の瞳でこちらを見つめる彼は国内でも歴史ある家の息子であり、イロニー家とも交流があったと思う。その隣でまっすぐに僕を射抜く青空は王家の末息子のはずだ。他にも、外交官の息子に将軍の息子まで。
「ここは…一体」
そう呟くと、隣に立つグルッペンとトントンがこちらに向き直る。
「ここはまあ、はぐれものの寄合、というのが相応しいだろうな。我々はここで表では出来ないような汚い事案をお上から請け負っている」
「ざっくり言えば裏社会の荒仕事やな。それにしても、どうして君が？」
トントンの問いに答えたのは、グルッペンだった。
「倒れていたところをゾムが拾ってきたんだ。恐らくイロニー家のやつに襲われたんだろうな」
「うちの…？」
「ああ。君も気付いているんじゃないか？伯爵が、君の弟君に家督を譲りたがっていることを」
「それは、……はい」
無感情にそう答えるとグルッペンはほう、と目を細める。
「やけに落ち着いてるな」
「もう、考えたところで僕にはどうしようもないですし。冷静に考えたら、今までの自分の努力が無駄になったぐらいで執着するほど、あの家に愛着は無かったので」
「ならば話は早い。偶然なことに、イロニー家の処分命令が下ったのだよ。正確にはイロニー伯爵の、だが」
「父、の、」
いくら邪険に思われていたとはいえ、実の親がその対象になっていると言われれば流石に動揺する。たじろぐ僕をよそにグルッペンはつらつらと詳細を語っていく。
「彼は阿片やら麻薬の類を秘密裏に入手しては高値で売っていたらしい。他にも色々やってくれているらしいが…まあそんなことはどうでもいい。我々はただ、彼を処分するだけだ」
「そこで、だ。この仕事を君に手伝ってもらおうと思うんだが…どうだ？」
おい、とトントンの咎めるような声を聞きながら、僕は迷いなく頷いた。
「やります。僕に、やらせてください」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
