【d!】紫煙に口づけ【shp】 (ページ6)

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そういえば何時だったか同居人に「好奇心は─────。」なんて言われたような、いや気の所為だったかもしれない。

何せもう随分と生きているため初めの頃の記憶は曖昧なのだ。

所々抜け落ちた記憶の海を彷徨ったところできっと答えは見つからない。

そういえば昔に比べれば諦めることが上手くなったような気がする。

昔はもっと下手くそでよくこの同居人に、同居人に……？

あぁ、今日はとことん駄目みたいだ。脳裏にあれこれと浮かんでは掴むことも出来ぬままに消えていく。そっと息を吐き、同居人の方を向けばぼんやりとスマホの画面を眺めていた。

この男も恋だの愛だのといった感情をまだ見ぬ人間に抱くことになるのだろうか？

それは、それはなんだか──。

いや、同居人が幸せになるに越したことはない。ただしいいやつができたとしても私にもきちんと構えよ、そう思いながら膝の上に丸くなれば大きな手で撫でられた。そのまま身を委ねて暖かな日差しと体温にそっと目を閉じる。

なぁ、同居人。
私が君に抱いている感情はなんて言う名前なんだろうな？
君は私が居なくなったらどんな顔でどんな声で、どんな気持ちになるんだろうか？

答えの返ってこない問いをなげかけてそのまま意識を手放した。