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「じゃあさ、最後になに食べたい？」
私がもたれかかっている丁度横の位置のソファが沈んだ。心なしか、自分が座る時よりも沈む勢いが軽い気がする。畜生。「んー」と少し間があいて、「それも思いつかんな」と、これもまた予想通りの回答が返ってきた。
「平気でお湯沸かしてカップ麺食べそう」
「まあそうやろな」
「私が寿司食べたい！とか騒いでも？」
「Aが食いたいもんあるんやったら連れてくわ」
現実にあり得ないようなことについて真剣に話し合うのが、彼には似合わない話題だなんてことはわかっていた。それでも、彼の中に存在する選択肢に触れたくて、あわよくばその選択肢の中に私がいたらいいな、なんて、小さな期待を抱いている。
彼には趣味がたくさんあるし、私だって好きなことくらいはある。持ち金が底をつきるまで散財するとか、ムカつくやつを一発殴っておきたいとか、最後となるとそれくらいのことをしたって世の中は見向きもしないだろう。
「ゲーセン行ったりしないの」
「最後の日にまでするもんじゃないやろ」
「確かに」
「逆にAはどうなん」と聞かれることもなく、ひたすら私が「あれはどう」「これはどう」と、最後の日に彼がしそうなことを投げかけ続けた。それでも返事は全てNOで、結局世界が終わる日ですら彼は寝腐って過ごすのではないかと思うくらいだった。
やはり彼はきっと、その時にならないと分からないタイプの人だ。これ以上聞き続けても、きっと答えは見つからないし、私が望む答えも返ってこない。それが彼らしいと言われれば、それはそうだけれど。
「考えてたら眠くなってきちゃった」
一進も一退もしない会話に自ら終止符を打ち、そろそろお風呂に向かおうとする素振りをすると、後ろのソファがグンっと沈んだ。何秒か前まで携帯を見ながらおしゃべりをしていた彼が、おもむろに立ち上がる。
トイレにでも行くのかと思い、行く先を眺めていると、彼は先ほど置いたばかりの煙草とライターの方向に向かって歩き出し、片手で雑に持ち上げて、もう一度ベランダに繋がっている大きな窓に向かって歩き出した。
「どうしたの」
「煙草吸いながら考えてくるわ」
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