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「告白は私からでもいい？」
「別にええけど、なんで？」
「お兄ちゃんが迷惑かけてる分と…ショッピくん、私に興味ないでしょ？」
「まぁ」
「ならそのほうが自然だと思う」
ふふっ、彼女は風が花を撫でるような軽やかな空気を漏らし、小さく笑った。
「じゃ、俺からもひとつ」
俺は、かねてからの考えを彼女に提案した。
「こうやって一緒に帰るんは、俺の部活がない時だけにしよ」
意図が読めない彼女は首を傾げ、続きを待った。
見上げる瞳がまん丸で、猫みたいやな。
そんなことを思っていたら、ふっ、鼻にかかった声が自然と漏れていた。
「クソ先輩から解放された高校最後の一年間、ちゃんと友達とも青春謳歌せな」
風の中を舞う花弁のように、彼女の自由を縛りたくなかった。
この時、不自由を憐む俺の提案に破顔した彼女とは、いい協力関係が築けそうだと思った。
．
それから俺達は、揶揄する周囲をあしらいながら順調に恋人のフリを続けた。
「どこまで皆を騙せるか、ちょっとわくわくしてきちゃった」
そう言って無邪気に笑う彼女に、子ども染みた悪戯好きな一面を垣間見た。
「俺も」と答えると、彼女はさらに笑った。
彼女に言い寄る男共を追い払う回数も確実に減り、梅雨を迎える頃、俺達は公認カップルとなっていた。
テスト前の部活動禁止期間に入ると、どちらともなく誘い合い市立図書館で勉強した。
そこに事情を知るチーノが同席することもあったが、理系クラスの俺と、文系クラスの二人では会話の質も量も違う。
肩を寄せ合う二人を視界の端に捉えると、胸中には決まって迷霧が立ち込めた。
そんな日の帰り道は、自然と繋ぐ手に力がこもった。
それは、気付きたくない変化だった。
．
梅雨は去り際に夏を引き連れ、その夏も駆け足で過ぎ去った。
部活を引退し、夏休みに登校日以外一度も会わなかった俺達は、秋の道を毎日並んで下校した。
初めは事実のすり寄せばかりだった会話も、今では明日には忘れるであろう些事や、他人であればくだらないと一蹴されてしまいそうな言動が大半を占め、彼女の隣を歩く居心地の良さは増すばかりだった。
「あのショッピくんが、今じゃ本気やもんなぁ」
その変化を目敏く追ってきたチーノは、クスクスと笑った。
共犯よりも、お邪魔虫のほうが余程しっくりくる。
膝裏を蹴り上げると、足元の弱いチーノは無様に転んだ。
背の高いやつは足元がお留守になりがちやな、気ぃつけや。
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