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禁忌を犯しているのは歌の中の二人だけじゃない。
放課後、少し埃っぽい準備室のソファに腰を沈ませスマホをいじっていれば職員会議から戻って先生が私を見るなり煙たそうな顔をする。
『なんですかその顔ー』
「いや、まだあったんかと思って」
『いてくれて嬉しいくせに？』
なんてねー、なんで笑えばひょいと取り上げられるスマホ。返してと言おうと顔を上げれば至近距離にある先生の顔。
先生の左腕が私の真横に伸びて背もたれに置かれる。スマホは私の傍に、空いた手で頬を撫でられる。
近づいてきた唇はそのまま私のそれと重なり貪る様なキスをする。
「もう今日はキスできへんかと思った」
唇を離しペロリと口の端を舐める。離れた体が嫌に寂しくて彼の服の袖を掴む。掴まれた反動で先生がこちらを振り向く。
「なんすか」
いつも余裕綽々で大人な彼がなんだか無性に憎たらしい。慌てたいるのは私だけなんじゃないか、こんなに好きなのは私だけなんじゃないか、子供だと思われているんじゃないか。そう思えば思うほどに焦りは募る。
『先生、早く私を大人にして……』
「……何言ってんすか。卒業するまでしないって約束したやろ？」
『だって、先生がもっと遠くなっちゃう気がして……や
袖を掴む手を解き自分の胸についているリボンを半ば強引に取りワイシャツのボタンに手をかけようとすればその手を先生が静止する。
「早まんなって」
グッと力の込められた手に我に返り腕を下ろしキュッとスカートの裾を握る。
するとふわりと抱きしめられ頭を優しく撫でられる。
「俺やって余裕なんてあらへん。いつ同級生のとこ行くかなんてわからんしきっとそっちの方がいいこともわかってますから」
『そんなこと──』
「まあ、俺が離せへんからどこにも行けへんすけど……」
『先生……』
先生の背中に腕を回ししがみつく様に力を込める。少し体を離し見つめ合えばどちらからともなくキスをする。
「せやなぁ、最終列車で俺の家に来る勇気があるなら考えてやらんでもええっすよ？」
『え？それって……』
「……雨降ってきたし送って行きますよ」
先生に釣られて私も窓の外を見た。分厚い雲がかかる空は濁った色をいている。
fin.
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