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願いの裏返し ページ5

目と目が合う


嗚呼、無理。こんなのズルい。


‥‥‥


照明が暑い、次の台詞は……

そんなことを考えていたのはさっきまでのこと、
今はただ、目の前の人が愛しくて仕方ない。


「嘘ついてて悪い、全部お前も守るためだったんだ」


「……ううん、いいのよ。始めからわかっていたわ」


「はは、お前には叶わねえな」


カメラが寄って二人の足下だけが写る


あと少し、このままで居たいのに


「はいオッケイ!カットーー!」


映画監督の大きな声がスタジオに響き渡り私と彼の距離は一気に開く


席を降りた監督が私たちの方へ向かってきた。


「天馬くん、Aちゃんお疲れ!今日の分はおしまいだよ」


「ありがとうございました!」


二人の声が重なり、小さな笑いがうまれる


なんとなく二人でスタジオの隅に行った



オーラのあるオレンジ色の髪に、魅惚れるくらい綺麗な葵色の瞳。それを見ていると目が離せなくなる。

ここに言葉は無いけれど、それが心地好くもあった。


しばらくすると井川さんが天馬を呼んだ


「そろそろ行くわ」

「お疲れ」

「Aもな、あとさ」


去ろうとしていた彼は後ろを振り向き、何かを言おうとしている


「なーに?」

「お前俺のこと見過ぎ」


それだけだ!と彼は早々に行ってしまった。


全然見てることバレてた。それはそうだよね、目があってたらわかるよね。


……目が、合ってた



この形容し難い気持ちはなんだろう。胸の奥がチクリと痛むんだ。
本当は気付いてる癖に、自分でも知らないフリをしている


そろそろ、覚悟決めなきゃなあ。



LIMEを開き、天馬のトーク画面を開く


『あとで楽屋行くね』


それだけ打ち込んで私はスタジオをあとにした。

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作者名:音猫 x他3人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年1月11日 7時

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