さよなら、王子様 ページ16
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結婚式を挙げることになって、誰を招待しようか部屋でひとり思い悩む。
仲の良かった友達、近い親戚、あとは…
ふと、綴の顔が思い浮かんだ。
同窓会には毎回行かなかったため、中学卒業以降、ほとんど会っていないはずだ。
深呼吸すると、震える手でボールペンを握り、結婚式の招待状を書く。
来てくれるかは、一か八かの賭けだった。
「A!」
控え室で待つ私のもとにやってきたのは変わらない彼だった。
「結婚おめでとう」
知らなかったな、なんて言ってなぜか照れる彼は、昔と全く変わらない童顔のままで。
「来てくれてありがとう」
なぜだか泣きたくなって、そう言うのが精一杯だった。
優しい沈黙に包まれて、二人黙りこむ。
なんとなく恥ずかしくなってうつ向くと、ふいに顔を上げさせられ、額にキスを落とされた。
意味なんて、とっくにわかっている。
「幸せになってな」
そうはにかむ綴を見てやっと、王子様は綴だったんだろうなって気がついた。
なんだ、こんなに傍にいたんじゃん。
お話の中のように現実は上手くいかない。
私はお姫様になれないし、王子様は私をお姫様にしてくれる訳ではない。
夢見るだけでろくに探そうとしなかったから、気がつかなかった。
さよなら、私の王子様。
綺麗で優しくて、絵本に出てくるような素敵なお姫様とどうか幸せになってね。
やくそくだよ。
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作者名:もも
キスの位置と意味:額 祝福・友情
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作者名:音猫 x他3人 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年1月11日 7時