【A3!合作短編集】キスの所為 (ページ14)

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さよなら、王子様ページ14

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ちいさい頃は、私もきっと王子様と出会って素敵なお姫様になれるって信じてた。
世の中の女の子たちが一度は夢見る、綺麗で優しい、絵本に出てくるようなお姫様。
だけど、現実は夢とは程遠くて、王子様もお姫様もここにはいなかった。

だけど、心のどこかではまだ王子様を待っている自分がいて、いつか、どこかで素敵な王子様に会えるんじゃないか、お姫様になれるんじゃないかと信じていて。
周りに夢見がちだと笑われても、馬鹿にされても、それでも私は王子様を信じ続けた。

ただ、幼馴染みの綴だけは私のことを笑わなくて、私の隣でただわらいながら、"いつか見つかるといいな"なんて言ってくれていた。

どんなときだって綴は私の傍で味方してくれて、やれやれとか言いながら結局は助けてくれる。
ヒーローみたいな大事な大事な幼馴染み。

中学に上がる頃には、一緒にいることも減って、いつしか隣でわらってくれることもなくなってしまったけれど、ずっとずっと大事な人。

でも、高校が別れて、大学も違うところに進学して綴はどこかの寮に移ってしまった。
もう話すこともないのかもしれない。会えないのかもしれない。
会えたとしても、わらってくれるかわからない。
あの、少し困ったようなわらいがお。

きっとあの笑顔もう見ることもないのだろう。

彼のことを思い出す度、チクリと痛む胸に、そっと見ないフリをしている。

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