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外はカンカン照りだったもんだから、日焼け、滝汗覚悟で作業しようと思っていたのに、うらたのお墓は気持ちの良い木陰の墓地にあった。
「…こんなところにお墓って建てられるんだね」
「ここ、いい所よね。向こうの世界とは違うみたいにここだけシーンとしてる。」
「…そうだね」
「しかも、なにより涼しくていい!残された人向きね!…あ、そうだ、後で浦田くん一家も来るらしいけど挨拶がてらお茶でもしに行く?」
「あー、う……?」
うん。そう言いかけた時だった。
風がビューっと前から吹いた。
前髪が乱れるほどの風。
勢いに思わず目を瞑ってしまった。
もう一度目を開けると、
私にはお墓の横にちょこんと座っているうらたが見えた。
…え?こんなあっさり出てくるもん?真昼間だよ?今。
「どうかしたの?」
「う、らた、?」
「え?!うらたくん!?」
私の視線の先を母も同じように見つめる。ただ、母にはうらたのことが見えていないようだった。
「…!? …いや!!え?!なになに、お母さんまさかうらた見えるの?!」
「い、いや!あんたが先にうらたくんのことを呼んだんでしょ!?」
「ち、違うよ!!」
何が違うのかは全く分からないが。
何故私がこんなにも大きな声を出して、うらたの存在を否定したかと言うと、
お墓の横で慌ててしーっと口元に人差し指を立てて私に訴えるうらたの姿があったからだ。
母も私の必死の誤魔化しに騙されたようで、髪を整えながらそう、そうよね、と小さく繰り返していた。
「お、おおお母さん!私やっぱり今日は1人で過ごす!」
「え?どうしたのいきなり」
「今日は感傷的になって3年前の今日のこと思い出す!から1人になりたい!」
「そんな元気よく言うもんじゃないよ…」
あははと嘘っぽく笑う私。
突然様子がおかしくなった娘を気味悪く思う母。
お墓の横でその様子を腹抱えて笑ううらた。
もうカオスすぎた。
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時