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体が勝手に動いていた。
知らぬ間に私はうらたのことを引き止めていた。
着てる服の袖をしっかりと握っていた。
「……ぃ、い…かないで… 」
「え?」
「…やっと会えたから」
「でも、会いたくなかったんじゃ」
「会いたくなかったけど、会いたかったの。」
「……意味わかんねぇな」
呆れられてしまったと思い、急いで顔を上げた。
すると眉を下げて優しく笑ううらたがこちらを見下ろしていた。
そんな懐かしい表情に私は安堵し、自然と綻んだ。
「……今日一日だけ、な?」
うらたの真っ白な指が私の頬に触れようとした。
しかし、通り抜けてうらたが私に触ることは叶わなかった。
「…あれ、私なんでうらたに触れてるの?」
「んー、まぁ、俺に会いたいって気持ちが強いからじゃね?」
「え?そうなの?会いたいって思ってると幽霊に触れるの?」
「いや、知らねぇけど」
嘘だ、絶対うそ。
何か知ってるのに隠してる顔をしたうらた。
私は触れるのにうらたは触れない。
今言ったことが本当なら、うらたは毎年化けてこの部屋に出てきてたくせに、私より会いたいと思っていないことになる。
…そんなの悔しすぎる。
「そ、そんなムッとすんなって」
「え?し、してないし…」
「顔に全部書いてあったけど」
「…ぐ……」
昔からなんでもお見通しのうらた。うらたには隠し事ができないなぁ…
夜風が勢いよく吹いた。
レースのカーテンが私たちの間を遮るように広がった。
……目が覚めると、私はベッドで寝ていた。
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時