未来 ページ31
「じゃあ、またね」
「また来年も来てくれるの?」
「うーん、気が向いたら」
「親不孝者!!」
キャリーケースを引いて実家を後にした。
あの後、どう帰ったのか正直覚えてない。
大泣きしたんだ。さぞお母さんは心配しただろう……
けど、悲しいはずなのに、どこか清々しい気分でいた。
最後のキス、うらたは優しく、笑った。
そして、私に約束をしてくれた気がする。
生きようと思う。
後悔ないように。
うらたに残念に思われないように。
今すぐに忘れることなんて出来ないけど、いつか、うらたよりも素敵な人を見つけて、結婚して、幸せになって。
駅に行くために踏切を渡る。
「……あ、」
昨日、うらたと最期を過ごした場所には小さな白い花が咲いていた。
「また来年、ね」
小さな花に挨拶をしてこの地から出る。
私の手にはあの2枚の写真。
家に帰ったらあの写真を飾ろう。
今度は表にして。
キラキラの笑顔、真っ赤な夕日、背の高い向日葵、大きな入道雲、控えめなピース、あの日のまま止まった私の時間。
何もかもが彼を思い出す引き金となった。
心に押し寄せた彼への気持ちが濁流のように流れ出して、私は止める術を持たなかった。
昨日まで。
ただ流れる涙が、頬をつたる感覚を、じっくり感じ、揺れる電車内で、踏み切り、ひまわり畑、うらたの家をながめる。
うるさいくらいに鳴いているセミは、まるで今ある力を振り絞っているみたいだった。
来世また、うらたと出会おう。
今度こそひまわりみたいに生を全うして。
end.
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時