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優しく笑いながらそう言ってくれたうらたに、私もと返した。
影は1人分だけ長く伸び、お互いの言葉はすっと、ふたりの間に消えた。
そして光に包まれた。
消えてしまう。私はうらたのことを思わず抱きしめてしまった。
光の粒がうらたを連れ去ってしまう。
消えてしまう。
本当の別れが来てしまう。
「……いままで、ありがと」
うらたをひたすら強く抱きしめた。
もう、抱き返してくれることは無い。
ただ、私が噛み締めているだけだ。
光の粒が量を増し、光度を増し、最愛との別れに加速をかけた。
目の前が黄色の光で充ちた。
『今世でAが幸せになれたら、』
うらたの最後の1粒が天に登りきった。
私はうらたが身につけていた、衣服をカッコ悪く、力強く抱きしめていた。
「うわあぁあぁぁぁああ」
大声でわんわん泣いた。気持ちが済むまで。
空はもう暗くなっていた。真っ赤な夕日と、眩しい光は消えてしまった。
私の手元には、2人が写った思い出の写真が2枚だけ。
顔を上げると、夏風が吹いた。涼しい。
『来世は一緒に居ような』
もう、季節は移り変わる準備をしているみたいだった__
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時