・ ページ28
「うらたはなんて書いてあった?」
「とにかくAを大切にしてやれって。」
「え?」
「Aに思春期まっただなかで触った時のことが書いてあった。」
「え…」
「キモイとか思うなよ!!」
「思ってないよ!」
「その時の熱が忘れられないんだって。ずっと一緒にいるはずなのに、分からないことだらけ。まだ知りたいって言う思いが溢れて、熱くてたまらなかったらしい。心臓がバクバクして、熱くて。Aのためなら壊れてもいいとまで思えてた。」
「……うらた、私にさっき触った時、熱感じた?」
「うん。……あったかかった。Aの優しさ。確かにまだ、知らないことだらけだけど、俺が知ってるAだけでいい。そのAが好きだから。」
うらたの目はとても真剣だった。
うらたと離れ離れになった3年間、いくら時間があってもなかなか埋まるものでは無い。
でも、その3年間の私を見せたいとは思わない。
うらたを抜いた私なんて、抜け殻みたいなものだったから。
中身の詰まってる自分だけ見て欲しい。
まだ、うらたに好いてもらえるような自分がいい。
「私たち、中3にしては、頑張って手紙書いたよね」
「な。こんな臭いこと。」
「ちょっと恥ずかしいくらいだもん。」
「…あと最後はこの写真か。」
裏にされている2枚の写真。
うらたはその1枚を私に渡してくれた。
せーので表に返す。
「あ、この写真、」
中3の夏休みに着た、浴衣の写真だった。
あのひまわりの所で撮った写真。でも、いつもみたいにカンカン照りの真昼に撮ったんじゃなくて、夜、花火をバックに撮っている。
いつもと雰囲気が違うのに、うらたの控えめなピースは変わらない。
「……この瞬間が、私たちの1番の思い出だったんだろうね。」
「忘れたくなかったから、ここに入れたんだろうな。」
夕日が私たちに差した。
オレンジ色の、少し切ない色。
「…もうすぐだな。」
「最後は踏切かな」
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時