・ ページ24
「私に!幽霊になって欲しくないんだったら、うらた触れちゃダメじゃん!」
「ごめんごめん」
「なんでよ!」
泣き止まない私。いずれも私の手をしっかり握り続けるうらた。
「離れたくないよ!もう!」
人通りのない道で、大泣きする。
見かねたうらたは私を勢いよく抱きしめた。
「……Aに触るのは、もうこれで最後にする」
「……え」
「だから、俺のことはもう忘れて。今日で。」
「無理だよ…」
「無理じゃない。死んだ俺のことは忘れて、いつか、この先Aは他の奴と幸せになれ」
「…他の人?」
私の呟いた言葉は誰かに吸い込まれることなく、つっかえた。
しんと静まり返った雰囲気に、高まった自分からまたいつもの自分にすーっと戻る感覚がした。
ふと地面を見ると、影は私一人のものしか無かった。
もう、諦めるしかないような気がした。
時期にうらたも私から離れた。
うらたは宣言通り、もう私に触れてこなかった。
「……いつまでも好きじゃいけないの」
「ダメ。今日で終わり。」
心が締め付けられるほど切なかった。
でも、もう泣けない。これ以上時間を無駄にしちゃいけない。
最後なら、忘れなきゃいけないなら、もう二人の時間を、噛み締めなきゃいけない。
「Aが持ってる写真、ぐちゃぐちゃ。俺のと替えてやるよ。」
「…ありがと」
お互いの写真を交換した時、ふわっと夏の風が吹いた。生暖かいのに、どこか涼しい。
私の涙を吹き飛ばし、まさに切り替えろと言われてるみたいだった。
「…時間的にも最後かもな。俺たちの縁がある場所に行けるのも」
「そうだね。」
私はうらたの隣を歩いた。
この道の先は、うらたの家しかない。
最後はあそこなんだ。
19人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時