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私よりも背の高い向日葵達が全方位を囲んだ。
「久しぶりに来たけど、やっぱり迫力すごいね」
「割と時間も経ってんのに、本数が一向に減らねぇのもすげえよな。」
「ここ誰かがお世話してるの?」
「向こうの小さい写真屋。あそこのじいさんが見てるらしい。」
「へぇ、お世話してくれる人がいるなら安心だね。…ねぇ、向日葵って健気だよね。」
「え?なんで」
「生命力強いし、太陽の方追っかけてるんでし
ょ?まぁ、そんな事くらいしか知らないけど、自分の生を全うしようと頑張ってるみたいで、元気出る。」
「死んだ俺にそれ言うなよ」
「確かに」
お互い顔を見合せて笑った。
うらたは後ろの明るい花たちも相まってより真っ白に見えた。
時折ちらつく幽霊としての影が心を締め付けた。
「A、見て」
「ん?…インスタントカメラ?」
「そう、ここで写真撮ろ」
「えー!あの時みたいに?」
「そう。3年ぶりにここで撮んだよ。」
いいこと思いついたって顔で私を見てるけど、この写真たちあんまりいい思い出じゃないんだけど……。って話をさっきしたばっかなのに!!
「この写真を、あのAの机にあった写真立ての中に新しく入れてよ。そしたらもうあれをひっくり返さないで済むから。」
「…どういうこと?」
「俺は幽霊だから写真には写れないんだよ。だから写真はA1人だけだけど、思い出は2人分だから。な?いいよな?」
「えー、……そんなに撮りたいならどうぞ?」
ほんとは写真なんて撮りたくない。どうせ、うらたが写ってない写真を見てまた泣く羽目になるから。
どうしたって私はうらたのことを引きずるし、忘れることなんて出来ないから。
でも、珍しく喜ぶうらたを見ると、あぁ、してよかったなって思える。うらたのためにした事でちゃんとうらたが喜んでくれてるならもうそれでいっか。
そう諦めがついた。
うらたはインスタントカメラを向かいの向日葵の茎に乗せた。
カウントダウンをセットすると、急いで私の隣へ走ってきた。
何もかも一生懸命なうらたになんだか、ドキドキしてしまった。
あの写真と同じような控えめなピース。
私は上手く笑えただろうか。
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時