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その言葉が嬉しくてたまらなかった。
「へへ、やっと本心を言ったねー」
「泣いたり、照れたり、笑ったり。Aほんとに忙しいな」
「何その言い方ー悪い?」
「いや?なんならさっきまでのつんつんしてる方が逆に変だった。…3年間悩ませてたよな。ごめんな。」
「いいの。謝ったってうらたは生き返らないんだし…。……でもやーっと言えてなんかスッキリしたかも。」
ははっと笑ううらた。さっきまで私の体を抱き寄せてくれてた腕を見ると、向こう側が透けて少しだけ見えていた。
それが苦しかった。
現実にすーっと引き戻されたよう。
お互いどんなに好きでも、相手は幽霊。私は人間。
この一線は越えられない。
いっそ私も幽霊になれたらな__
「A…?」
「え?」
「手、なんか透けてね?」
慌てて自分の手を空へとかざす。
指先の方が空の青を写しているような気がした。
「な、なんで…」
「おい!今考えてること全部なしにしろ!」
「え!?」
「いいから!」
声を珍しく荒らげたうらた。
私は慌てて目を瞑り、心をできるだけ無にした。
5秒ほどだった後、うらたの安心の含まれたため息が降ってきた。
「戻った…」
「ほんとだ…!よかったぁ。めちゃくちゃ怖かった…… ねえ、なんで今こうなったの?」
「い、いや。知らない。」
絶対何か知ってるじゃん。そんな分かりやすく、口をごもらせて…。
「…なにか言えないことなの?私がうらたに初めて触った時もこうだった。なんなら、さっきうらたは私に触ったし。」
「……これを知ったら、Aが危ない目に合うかもしれないんだよ。…好きだから、それは嫌なんだよ。これ以上傷つけたくないから。」
「……本心ですかそれ」
「はぁ?!ここで疑うかよ!れっきとした本心だけどなにかぁ?!」
「分かりたくないけど、分かった。」
「お前それ好きだな。」
「でも、何かあるんでしょ?人間が幽霊に触れるって。」
「…まぁな」
「深く掘り下げないでおく。今日だけは聞き分けのいい女になる。」
これでいい。うらたと穏便に、お互い幸せに終えるにはこの先がある私が我慢しなくちゃいけない。わがままなんて言ってられない。
うらたによれば、今日だけなんだから。
切ない感情がまた私の心を覆った。
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時