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じゃあねとお母さんに手を振る。
私はまだうらたのお墓の手入れをしたいと言って先に帰ってもらった。
白い帽子を被った母が急勾配を下って行った。
母の姿が見えなくなると、私はゆっくりうらたの方へと視線を向けた。
「な、なんだよ」
「出てき方ってのがあるでしょ!!」
「そ、そんなに怒んなって」
「怒るよ!内緒じゃなきゃいけないなら先言ってよ!」
「ごめんごめんって。そんなカッカすんなよ」
ヘラヘラと笑ううらた。こいつのからかいにはいつになってもかなわない気がして、腹が立った。
「なぁ、朝どんな気持ちだった?」
「え?」
「日付が変わったあと、化けて俺がAの部屋に出たの、覚えてない?」
「覚えてるに決まってんじゃん。……朝起きていなかったから夢かと思ったよ。」
「夢?Aも結構ファンシーな考えしてんだな」
「あのねぇ、それ君が言う?」
「どういうことだよ」
「幽霊のうらたが!存在も危ういうらたが!どっちがファンシーって話!」
うらたと顔を合わせればまず口喧嘩。
これは小さい時から全く変わってない。
でも、いっつも私はうらたに窘められるように終わる。
それが悔しくってしょうがなかった。
「…それに、」
「それに?」
「この時期、毎年うらたが死んじゃう夢見てたから。……だから、やけにリアルだったけどそういう感じで夢見ちゃったのかなって思った。」
「毎年俺が死ぬ夢見てたんだ。」
うらたの声は先程と比べてやけに落ち着いたトーンだった。
慌てて顔をあげると、目を伏せなんだか悲しそうな顔をしていた。
「ひ、引いた…?」
「は?なんで」
「だって、私は3年間ずっと……とまでは言わないけどいつもこの時期は毎日うらたのこと考えてたんだよ?キモくない?」
「キモくないよ。」
「ほんとに?」
「ほんとだって」
そう言うとうらたは軽々しく立ち上がり私の隣へ歩いてきた。
「忘れられるより、ずっとマシ。」
その声を聞いて思わず私は反射的に彼の瞳を探してしまった。やっぱり曇っていた。暗い顔をしていた。
「……私は、忘れた日なんて1度もないよ。だからこれからもわす…」
「まぁ、先の話はいいんだよ。今までAが覚えててくれたことが嬉しい。ありがとな」
……遮られてしまった。彼に触れたい。隣にいるのに何故か遠くに感じる。
3年ぶんの不満やら、言いたいことやらを今日一日で埋められる気がしない。
「……あれ、」
今は、昨日みたいに触れることができなかった。
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翼 - この作品を読んで思わず泣いてしまいました 。😢とても素敵な作品ですね。この作品がとても好きになりました! (3月5日 20時) (レス) id: f515e19b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むん | 作成日時:2023年8月14日 0時