あなたが部屋着に着替えたら 2

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彼が予約しておいてくれたのは、フランスのグランメゾン帰りのシェフがいるフレンチだった。


前に一緒に見てたグルメ雑誌に名前も場所も非公開でその存在だけ掲載されていたところ。

紹介がないと予約出来ないって書いてあったし、まさか個室２つの、ホテル利用をよく知る人ですら知らないような、そんな稀有なところだったなんて！


ポツリと、
へぇ〜、、
どこなんだろ？

という私の独り言をちゃんと聞いてくれていたんだ。


でも、どうやって見つけ出したんだろう？

章ちゃんが頻繁にフレンチ通うなんて、あり得ないと思う。


だって、焼き鳥屋さん大好き！

赤提灯でも厭わない！

という彼の食生活は、私もよくよく知ってるつもり。



飲んじゃうと食べなくなっちゃうし、元々そんなに食欲旺盛なヒトでもないから、いわゆるジョシのカフェランチでも、彼のお腹には十分満ち足りた量らしい。


食通！みたいな方はきっとお仕事場にたくさん居られるんだろうから、手を尽くしてくれたんだろうな。


それとも、、、

前に誰かと来たことあるのかな？？




嬉しい。‥‥‥けど。

向き合って座ってる彼はカトラリーを綺麗に使って、綺麗に口へ運んでいて。


ちょっとだけ、私の知らない人みたいだった。




‥‥‥もしかしたら、私が知っている彼なんて、彼の中のほんの少しなのかも知れない。

けれども、都度何かあれば、説明して私を納得させてくれる彼にこんなことまで言うのはいけない気がして、

目の前の美しいお料理にだけ集中しようと思った。






食事が終わって部屋へ戻って。
テレビのない空間も、静かでいい。


代わりにオーディオから、聴いたことがない美しい旋律のインストルメンタルが流れる。



「誰の曲？

すごく落ち着く綺麗な曲だね。」


「ん〜？」


章ちゃんの言葉を遮るように、部屋のチャイムが鳴る。



私の髪をくしゃっと撫でて、

「ちょい、待っとって？」

って、ウインクを１つ。


普段なら、
ヤダ、何やってんの？
って笑えるのに‥‥‥。


今日の章ちゃんには、なぜか何も言えない。


‥‥‥なぜか、、

じゃないか。


あんまりにも様になってて、心臓がドンって波打ったから。

私に一瞬触れたところが熱くて仕方なかったから。

どうしよう。。。


今日の章大くんは、手に負えない。

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