+°_15 ページ15
小さい頃。
周りの全てが自分より大きく、怖く見えていた頃。
家族で船上パーティーに行ったんだ。
偉い誰かに招待されて、あたしたちは満面の笑みを浮かべているはずだった。
船内が傾き始めるまでは。
『大丈夫?思い出させちゃったな…』
温かい手が頭に触れた。
それであたしは過去から現在へと思いが戻ってきた。
「あなたも、いたんですか」
頭の手を振り払い、一歩後ずさる。
あの時のことなど思い出したくもない。
『…一緒に居たのにね』
「へ?」
『覚えてないんだよね。僕のこと』
「知らないです、美尊のお兄さんなんて」
そうだ。
影すら感じなかった。
なのに、彼はあたしを知っている。
彼の記憶だけがあたしを残している。
あたしのメモリーには…全くの空白なのに。
忘れているという感覚さえない。
“ ない ” のだ。
『僕にとって特別な人だったことも』
「……?」
『あの時にAちゃんは、僕のことだけがすっぽり抜け落ちた』
言っていることが半分も理解できなかったのは生まれて初めての経験。
『思い出してよ…いつまで忘れてるの…?』
やばい、と思った時にはあたしの反射神経では反応しきれなかった。
後頭部を固定されて言葉を発する暇もなく綺麗な顔が重なる。
オランジェの甘酸っぱい香りがあたしをおかしくさせる。
まるで睡眠薬のように、静かに意識は奥へ落ちていった。
目を閉じる寸前、笑ってるようにも泣いてるようにも見える尊氏さんの目が何かを語りかけていた。
543人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カジャリア(プロフ) - 0307yukieさん» 突然の報告で本当に申し訳ないのに、そんな温かい言葉をありがとうございます。また春に… (2018年2月1日 22時) (レス) id: 8e6c7311c0 (このIDを非表示/違反報告)
0307yukie(プロフ) - 受験勉強頑張ってください〜!春に笑って帰って来れることを楽しみにずっーと待ってます!体調に気をつけて頑張ってください!無理は禁物ですよ〜! (2018年2月1日 22時) (レス) id: fbf429d456 (このIDを非表示/違反報告)
カジャリア(プロフ) - winter,10さん» ありがとうございます^^ 設定が設定で私もなかなか悩むのですが、期待を裏切らないように頑張ります (2018年2月1日 7時) (レス) id: 8e6c7311c0 (このIDを非表示/違反報告)
winter,10(プロフ) - こんばんは!更新されるたびに見せてもらってます!本当のトドメのキスもこちらの物語もいつも気になってます!(笑)この作品好きです!!!これからも読んでいこう思います!(笑)体調など無理せずに頑張ってください!!!応援しています! (2018年1月31日 23時) (レス) id: 34ea94a7f0 (このIDを非表示/違反報告)
カジャリア(プロフ) - りんさん» ありがとうございます。作者もゴールが見えておりません笑 (2018年1月29日 7時) (レス) id: 8e6c7311c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:カジャリア | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734
作成日時:2018年1月15日 14時