9095

+°＿13 ページ13

それはそれはいいお湯でした。
薔薇が浮かんでて正に薔薇風呂。



だから美尊は肌綺麗なんだな。
お酒も飲まないし。



用意されていた緩い服を着てガウンを羽織って廊下に出る。
隣の部屋…というのはこっちかな。



右にしか隣がないから多分合ってるはずなんだけど。



「失礼します…」



開けた瞬間入ってくる優しい光。
部屋の電気自体はついておらず、ベッド横の間接照明一つがこの空間を満たしている。



『いらっしゃい、座って』



ポンポン、とあたしを誘う。
読んでいたのか無造作に本が重なっていた。



『食べる？オランジェ』



あたしが座ると、ガラスの食器に乗ったオランジェを目の前に出してちらつかせた。
大好物だけど…太るからやめておく。



「大丈夫です」


『…好きじゃなかったっけ。これ』


「いやでも…何で知ってるんですか」



あたし彼に会ったことある？
平然とした顔をしている尊氏さんが何を考えてるのか分からない。



『ずっと前から知ってるよ、何でも』



ほら、って手の上に乗せられたらそりゃあもう食べるしかない。
結局食い気が勝つ色気のないあたし。



「どういうことですか」


『パーティー嫌いでしょ？』



オランジェを頬張るあたしを見ながら尊氏さんが軽く笑った。

+°＿14→←+°＿12

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す