声優オタクの声優さん ぱーと8

運命の出会い ページ48

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あれは俺が24歳とかそれくらいの話。

その日も仕事でアフレコスタジオにいた。
今日も頑張ろ〜といつものように考えてた。
ただそれだけ。


まさか運命の出会いを果たすとは知らずに。




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いつものスタジオ。いつもの風景。
そして素敵な先輩たちとちょっと厳しい監督さん他。


違ったのは一人の女の人。

見慣れない顔で端の方に座ってた。
入口付近に座っているから新人さんだとわかる。

見たところ俺と同い歳くらい。




第一印象は美人さんだなぁ。





可愛いか美人かで言えば美人。
座っているから身長は分からないけど、女の人にしては高い方なんじゃないかな。


ガン見するのは失礼だから横目でちらりと一瞥する。
するとその視線に気付いたのか、女の人は立ち上がってこちらに向かってきた。




「あの。今お時間大丈夫ですか？」


「へ？あ、はいっ！」


「初めまして。私、賢プロダクションの実川Aと申します」


「あ、ご丁寧にどうも！宮野真守っていいます！」


「ふふっ。存じ上げております」




話してみた印象。ものすごく丁寧。




所作とか言葉遣いとか目に入るもの全てが丁寧。
おしとやかって言葉が良く似合う。


育ちが良いってこういう人のことをいうんだって思ったくらい。

声は女性にしては低めだけど、言葉遣いのおかげで見た目以上に落ち着いた雰囲気を纏っている。




どんなお芝居をするんだろうか。




ただそれだけが気になって仕方がない。
きっと繊細で周りを癒すようなそんなお芝居なんだろうな。




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収録が始まって数分。

あの女の人、基、実川さんの出番。



予想していた通り名前のない役、所謂モブの声を担当していた。
彼女が席を立ったタイミングでふと台本に目を落とすと、そこには男3の文字。




え？男役？




そう思ったと同時に聞こえてきたのは、俺たちと同じくらい低くてよく響く声。

声の主は実川さんだった。




さっき想像していたお芝居とは全く真逆の力強くて豪快な、それでいてしっかり心に響くお芝居。




初めて来たであろう先輩ばかりのこの現場で、堂々と自分の出来るお芝居をする。

その後ろ姿がものすごくカッコよかった。




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