＊ ページ10
「……ダメ……？」
岸くんの方が聞いてくれた。
私はただ、首を横に振った。
ゆっくりとした行動の合間にも、
返す言葉を見つけることすら、出来なくて。
即座に伸びてきた腕を、屈むようにして受け入れてしまった。
じっと目を見つめ合ったまま、
岸くんの反対の手に、後頭部を押さえられ、
引き寄せ合った位置で、
互いの唇が重なった。
「……………」
音もなく。
だけど最初から深かった。
してはいけない過ちだとか、一度きりの思い出だとか、
そういう考えがあったかなんて分からないし、
もしもこれが私へのプレゼントだなんて、
岸くんがそんなことを思ってしてくれたのなら、
この人は優し過ぎて非道なことをする、
真面目に見えてとんでもなく愚かな人だと、
とにかく、私の心は荒れる一方で。
それでも昂ぶってくる強欲な気持ちのままに、
テーブルの椅子に座ったまま、押し倒される感覚を、嬉しいとばかりに受け入れる。
ただ理性が吹っ飛んだわけではないと知ったのは、そのすぐ後。
思いの外押し倒す先が硬かったからか、
岸くんは自らが椅子に座り、その上に私を乗せるように座らせ、強く抱き締めてくれた。
服の上から触れられて、そのまま、めちゃくちゃな行為へと向かう行きの道中、
「ん、ふ……っ、」
再度キスを絡められ、心地良い程の息苦しさに襲われた。
躊躇う仕草で首を引いた瞬間、
それすらも引き留めるように、岸くんはくしゃっと両手を掴んでくれた。
だけどその瞬間、行為は止められた。
「……まじか、」
と一言漏らた岸くんは、さっきまで握っていた私の右手ではなく、
今初めて触れた左手を遠慮がちに眺めたままだった。
「……………、」
自分のことだから、すぐに分かった。
岸くんが、私の薬指に光る小さな石を見つめていることくらい。
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さくら - とても良い作品でした。自然と物語の最後には涙があふれてきました。突然ですが、続編の方を見たく、検索してみましたが見つからず、どのようにしたら見られますか？ (2018年12月15日 16時) (
レス) id: 0ab5784288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：踊れる人大好き芸人
| 作成日時：2018年7月20日 10時
