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岸くんのファンであることも、
例のお蕎麦さんに通っていたことも、
きっちりと昇華し、私は仕事に励んでいた。
近所に違う、お気に入りの蕎麦屋さんが出来た。
昼間から並び、
カウンターでかけ蕎麦を啜っていた。
すると隣の席の若い男の人に、前を横切るようにして、
水の入ったピッチャーに手を伸ばされた。
「さーせん、」
っ、
さり気なく聞こえたその声に、思わず二度見した。
「………」
それはどこからどう見ても、
かつて憧れた、その人だった。
「……あ、握手っすか?どーぞ」
「っ、」
あまりに固まってしまっていたためか、躊躇いもなく手を伸ばされる。
「…………あ、ありがとうございます、」
ファンでい続けることを諦めたからか、
冷静な気分で握手だけしてもらう。
一方で、蕎麦を啜る傍ら、
「……そう言えばファン辞めちゃったんですね」
「………」
「最近ライブに来ないなーってずっと思ってました」
「え…………」
目も見ずに、ただ箸を口に運びながら。
「………」
帰り際、岸くんはあることを言い残した。
「……もしまだ俺に少しは興味持ってくれるんなら、明日オフなんで、夜9時に"例の場所"、来てください」
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さくら - とても良い作品でした。自然と物語の最後には涙があふれてきました。突然ですが、続編の方を見たく、検索してみましたが見つからず、どのようにしたら見られますか? (2018年12月15日 16時) (レス) id: 0ab5784288 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:踊れる人大好き芸人 | 作成日時:2018年7月20日 10時