悪戯

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「おはようございます」


いつもなら犬みたいに駆け寄ってくる岸が今日は珍しくデスクについてる。


「きーし？おはよ」


私がいつもの岸みたいに顔をヒョコッて覗かせれば、ムスッとした顔の子犬ちゃん。


「何その顔」


ほっぺをむにーてしてみる


「遅いっす！」
「なにが？」
「返事！おれ、ねてました！」


言葉にならない言葉で早口に喋る岸。

社内でも、岸はバカだからー！とか、日本語不自由だからー！とか、上司とか岸の同期とかにからかわれてる。


でもそんなとこが天然でカワイー！なんて女子からの人気も高いのが現実。




「遅いっていっても23時くらいでしょ？」
「飲んでる時に返信くれてもよかったじゃないっすか…」



しょぼんてしてる岸になんだが母性をくすぐられる。
どうしたら機嫌直るんだろうって考えて、「今日のみいく？」てきいたらパァってあからさまに明るい顔して「いくっす！」なんて言うもんだから、こっちまでニヤニヤしちゃう。



「おつかれっす！」
「お疲れ様」



カチャンて冷えたジョッキがいい音を立ててぶつかる。

喉を鳴らして飲み干すキンキンに冷えたビール



「んっまぁ！」
「んまいっすね〜」



そんな私をニコニコと幸せそうにみてる岸はやっぱりかわいい。


だから男として見れない。


「かわいいねえ」ってクシャクシャに頭を撫でたら「かわいくないっすから！」て、パシンて振りほどかれた。



「だからぁ、先輩はっすねぇ、」
「なかよし、しょおくんとぉ、俺はそれがぁー！」



いつもうまく喋れてない日本語がいつもの2倍くらいに下手。呂律もまわってないし主語述語もない。


「酔ってるの？」


ペシペシってほっぺをたたいてみる。



「…先輩のせいで酔ったっす」
「なーんで私のせいじゃ、こら！」
「Aさんがしょおくんばっかかまうからっす」



キュン。かわいい。

岸のたまーにでるAさん呼び。


「そっかぁ、そっかぁ、かわいいねぇ、岸ちゃんよしよし〜」



ワシャワシャーって頭を撫で回すさっきは嫌がってたのに今度は気持ちよさそうにスリって、私の手にほっぺを寄せてくる。

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