奇跡の雨 3 (ページ8)

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77.二人きりページ8

病院を出る。

恐らく、和也くんはまだ出てこないだろうなと思いつつ、夕食を一緒に食べようと待つことにする。

近くにあるベンチに座り、病院を見上げる。

雅紀くんも入院しているし、もしかしたら病院内で会うかも知れないな。

その時、雅紀くんに二人をどう紹介しよう。

普通に友達でいいのだろうか。

それとも、居候させてもらってるんだと正直に言った方が良いだろうか。

でも、理由を聞かれたら何て答えよう。

いい大人が家出してきたとか、雅紀くんには言いたくない…

「…翔ちゃん？」

顔を上げる。

驚いた顔をしている和也くんに笑いかけて、立ち上がる。

和「先に帰ったんじゃ…」

翔「智くんに夜はどっか食べ行きなって言われて。

和也くんもお腹空いてるだろうし…

一緒に食べに行こうかなって。」

和也くんが困ったように笑った。

和「僕、そんなにお腹空いてないんですよ…」

翔「え、ほんとに？」

和「はい。

なんか…兄さんの頭から血が出てる光景が、脳裏に焼きついちゃって…」

和也くんが目を伏せる。

…そうだった。

和也くんは目の前で、智くんが傷付いたところを見たんだ。

食欲が失せるのは当たり前だ。

和「だから、家に帰っても材料も無いですし、どこかに食べに行ってきて下さい。」

俺も帰るよ、と口に出す前に鳴った俺の腹。

渋々小さく頷いた。

翔「でも、心配だから家まで一緒に戻るね。」

俺の言葉に、和也くんは少し嬉しそうに笑った。