・アンドロイド ページ31
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たまたま掲示板で見掛けた、近所で開かれる町興しなるものに行ってみることにした。
商店街の入口で手作り感満載なチケットを購入して、それを使いたいお店の人に渡す仕組みのようだ。
「なにするー?」
「Aのやりたいことでいいでやんすよ」
そうだった。サクマはだいたい私任せだ。
それは仕方ないかと苦笑いして、なにをやろうかキョロキョロしてみる。
「あ、ボールすくいとか懐かしい」
「どうやるの?」
「やってみる?」
「うん!」
子供の頃はお祭りの出店によくあったのに、最近はこういう遊びもやらなくなったな。
お店の中に居たおじさんに二人分のチケットを渡してかわりにポイを受け取った。
「こうして持つでしょ、それで……」
しゃがんでどれを狙うか見ている私の背後で、サクマが観察しているのを感じながら水の中へポイを差し込んだ。
水色と白が綺麗な中くらいのボールは見事取れた。
「やった! ほらこうやるの!わかる?」
「うん! Aはどれがいい?」
私? 私は……これかな。と、今度はピンク色のボールを指さしたらサクマはヒョイといとも簡単にすくっていく。
ポイが水に濡れても計算したかのような角度とスピードでいくつも掬ったサクマは誇らしげに鼻を高く上げている。
「お兄ちゃん凄いね!」
「およよ?」
そこへサクマの技にパチパチと拍手喝采の坊やが、キラキラの笑顔でサクマの隣に座り込んだ。
だいたい五歳くらいかな?
「あれ、僕ママは?」
「あのお店でご飯たべてるよ」
坊やは食べないの?
というか、小さな子一人で出てきて大丈夫なの?
「お前どれが欲しい?」
「え、取ってくれるの? あ、これこれがいい!」
サクマはぽふぽふと坊やの頭を撫でて、坊やの欲しがる赤いボールを掬った。
そしてそれを坊やに渡すと「ありがとう!ヒーローの色だよ!」と、にこにこの坊やはサクマに何度もお礼を言う。
「かっちぃよな! ほらそろそろ行きな。お前の居場所は決まってるだろ」
「うん! ほんとにありがとう!」
大きく手を振って戻って行く坊やを見つめるサクマの表情は謎めいていた。
口元は笑っているのに瞳は笑っていない。
「サクマ?」
「あ、はい!これはAにね!」
振り返ったサクマは、またいつも通りのとびきりスマイルだった。
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☆ゆきんこ☆(プロフ) - tbmrrkqq8さん» コメントありがとうございます!楽しみにしていただいてるなら頑張って書きます!!ほんとこちらは空想の中の物語として楽しんでもらえたら良いなって思います。後編も読んでもらえるように頑張ります☆ (2020年10月14日 23時) (レス) id: e8f02d2b5a (このIDを非表示/違反報告)
tbmrrkqq8(プロフ) - 続き気になります!!いつも更新楽しみにしてます!お話の内容は現実世界から離れているのに引き込まれてしまいました。これからも応援してます (2020年10月14日 20時) (レス) id: 0465c5231f (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - 苺さん» ありがとうございます!!アンドロイドと特殊なのでどうかなと不安なとこもあったので嬉しいです!!やっていた事を止めてまで読んで下さってる!?それは頑張って更新しなきゃですね!!頑張ります(^^) (2020年10月8日 19時) (レス) id: e8f02d2b5a (このIDを非表示/違反報告)
苺(プロフ) - ゆきんこさんの作品、どれも大好きですが、今回のは特に刺さりました…もう毎日の楽しみで更新されるたびに、それまでしてたこと手を止めて世界に浸ってしまい好きです!これからも応援しています。 (2020年10月7日 17時) (レス) id: b899b04b91 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - まりんさん» まりんさん!コメント有難うございます!!あんな暖かそうな人を冷たい機械にしてしまったんですけど、少しずつ佐久間さんらしくなっていくのでそこを楽しんでもらえたらなと思ってます(^^)私も読んでもらえて幸せです!! (2020年10月7日 13時) (レス) id: e8f02d2b5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年10月5日 21時