お前が死ぬ夢を見た。【鬼滅の刃】

十二夢 華々しく散って逝く ページ20

日が昇る前に来たのに、帰らなければと気づいたのは日が落ちる少し前だった。

『険悪さの欠片も無く、君と語れたね。
私は嬉しいよ』

そう微笑んだAは、柄にも無く玄関口で手を振っていた。いつもならば、屋敷まで送っていくのだから、一抹の不安と寂しさを感じながら雨屋敷を後にした。


──────

『ふぅ……、久しぶりに充実した時間だったね』

「A様、お体の方は……」

『ふふっ、そんな顔をしないでおくれよ緋月。伏し目がちの顔もまた美しいけれど、人っていうのは笑顔が一番綺麗なんだよ』

「承知、しております」

A様は、もう長くない。
言うには、右肩にある波紋のような特徴的な痣が要因らしい。しのぶ様に見せましょう、とは何度も言ったがA様は顔を横に振るばかりだった。

『この痣はね、私の命を使う代わりに私に沢山の人を救える力をくれたんだよ。だから、私はこの痣に感謝している位さ』

そういって、いつも通り緩やかな弧を描く口からは血が溢れていた。

「本当に、死ぬのは怖くないのですか……？」

「私が鬼殺隊に入った理由は、復讐でも幸せを掴むためでもない。兄のように人のために命をかけられる人間になれば認められると思ったんだ。あの時は(・・・・・)死ぬのなんて怖くなかった、それで必要とされるなら本望だったんだ。


ただ、今になってようやく命が惜しくなった。でも、後戻りするには少々遅すぎた。
死ぬのは恐いさ、でもそれしか道が無いのなら
せめて、柱として華々しく散って逝くだけさ




ド派手にね」

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