12話 ページ12
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「乙原の部屋こっちだっけ」
「やだあんた誰と間違えてんの!?この浮気者!」
「なんだそのノリ……、こっちか」
「え、最初の方であってるけど」
幾分か解れた恐怖心。
誰とって野薔薇しか居ないけどね、とけらけら笑いながら部屋に伏黒を入れる。
野薔薇が『男は部屋に入れたら一発で狼よ、だから入れちゃダメよ』って言ってたけど伏黒なら大丈夫だよね。
なんとなくそういう欲なさそうだし。むっつりそうだし。(だからだよ)
きょろきょろと部屋を見回す伏黒に「面白いもん見つかった?」と聞く。
するとオマエまじで……、みたいな顔をされたがどういうことなのだろうか。もしかして喧嘩売られた?
「面白いもんねェよ、オマエの部屋」
「つまんねェ人間って言われてる気分」
軽く言い合いをしていると、ぱち、という小さな音がして電気が消えた。
ぎょっとして伏黒の胸ぐらを掴む。苦しいとか離せとか言う声は聞こえない。
「ヤバくない!?居るって!居るよ絶対!」
「俺は非科学的なものは信じない。それにしても、幽霊無理なんだな」
「呪霊は倒せるもん。ただ幽霊は霊媒師にならなきゃいけないから無理」
「基準がよく分かんねェよ」
「基準もクソもあるか!!」
ひええ、と真っ暗な中電気をつけようと足掻く。
なんらかの音が聞こえた静寂の後に、伏黒の声が響いた。
「かわいいな、って言いたかっただけだよ」
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「(むっつり出さないで)」
「(喧嘩売ってんのか)」
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作者名:きゆさずき | 作成日時:2023年8月10日 23時