はじめまして ページ22
その日は子供の人身売買に手を染めている組織への潜入捜査の日だった。事務所にはいつも2人体制でいることは事前調査で分かっていたし、そこのデータさえ盗ることが出来れば良かった。
管理室の1人を気絶させ、もう1人の守衛の首元にナイフを突きつけ、監視カメラの機能を停止させ、パソコンのパスコードも盗んだ。用済みになった守衛も気絶させてロッカーの中に隠しておいた。
パソコンが1台あれば、疑われる前に近辺のパソコンをハッキングして情報を盗むことは特段難しいことではなかった。手早くUSBに情報を移して胸元のポケットに隠した。
そこで私は己の甘さを痛感することになる。セキュリティシステムに引っかかってしまい、私は単独で敵と対峙することになってしまった。
落ちていた銃を握った時、私は兄を探すために人を殺してしまうのか?という恐怖と後ろめたい気持ちが襲ってきた。でもナイフでは身を守りきれない。私は銃を片手に走って逃げた。
建物に跳ね返る銃弾の音、私を追う足音。そして遂に右腕を銃弾が掠めた時、初めて死を覚悟した。熱を持った痛みと抑えても溢れでてくる血に人の身体のもろさを感じた。
そして最後まで銃を撃つことは出来ず、私は倉庫の物陰に身を隠した。扉にはつっかえ棒をかけて誰か来た時用に少しでも時間を稼げるようにした。もたれかかったコンテナの温度さえ今は心地いいほど興奮して汗が出ていたし、口から心臓が出てきそうな程心拍数は上がっていた。
荷物の中身を漁るが止血できそうなものはない。
仕方なくカーテンをハサミで切り裂いて腕に巻こうとするが、経験したことの無い痛みでどうにも出来なかった。
そんな時、倉庫の扉を誰かが開けようとしている音が聞こえた。殺される。そう思ったが、右腕に見えた兄に渡すはずだった腕時計で私は冷静さを取り戻した。
兄がいなくなってから、いつだって誰も助けてはくれなかった。ずっと自分のことは自分で守ってきた。
ここで焦ったり怖気付いたらダメだ。
爆風とともに現れたのは、さっきまで戦っていた集団の中にはいなかった男だ。すらっと長い手足に不健康そうな目のクマ。私は左手で銃を構えてその男に向けた。
し「うぇぇぇ!血出てるじゃん!みんべんさん血が出た女の子がいる!」
その男は私の傷を見て騒ぎ出した。
本当に驚いているのかどうなのかわからなかった私は向けた銃口を変えないまま続けた。
「誰ですか?」
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きのこ丸(プロフ) - 名無しさん» コメントありがとうございます! (2022年8月7日 5時) (レス) @page12 id: 8169aa2d03 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - 続きが楽しみです!頑張ってください!! (2022年8月3日 19時) (レス) @page2 id: 61fd28e57c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのこ丸 | 作成日時:2022年8月3日 4時