こちらびんとろ探偵事務所(BinTRoLL)

大人マウント ページ13

い｢見て、今平日は全皿90円セールだって｣

｢いいねぇ｣

い｢しかも今週までだ｣

｢ちょうどお昼だね｣

い｢行っちゃう？お寿司屋さん｣

｢行っちゃおうか｣





古紙をまとめていたいちはちさんが、1枚のチラシを持ってこちらにやってきた。でかでかと書かれた平日90円税抜きのチラシに私もいちはちさんも釘付けだ。





時計の針は12を少し超えたところで、腹の虫は早く食べ物を寄越せと騒いでいる。片付けていた書類をそのままに、カバンに貴重品を入れてサンダルを履いた。





家から歩いて15分。
回転寿司屋さんにやってきた私たちは席に着くとすぐお茶やらおしぼりやらを出して、タブレットをのぞいた。





い｢まぐろとつぶ貝とえんがわと…｣

｢えんがわ私も食べたい。あと、はまちとコーンとサーモン｣

い｢5個までだって。一気に頼めないって言われちゃった｣

｢そんなに頼んでた？｣

い｢2回に分けて頼もう｣






平日の昼ということもあり店はそこまで混雑しておらず、10分と待たない間にテーブルにはお寿司がずらりと並んだ。





｢いただきます｣

い｢いただきます｣





私はお寿司屋さんに来るといつも同じものしか食べない派の人間なので、最初にえんがわとはまちは必ず頼む。
その後にサーモン食べてコーン食べて、あとは好きな物をその日の気分で食べるのだ。





い｢Aちゃんいつもサーモン食べてるよね｣

｢うん、好きだから｣

い｢かるてっとさんもずっと食ってるよね｣

｢あの人はそういう人だから｣

い｢え、コーンに甘だれかけて食べるの？｣

｢これ食べたことない？すごい美味しいよ｣






｢追加で頼むけど何かいる？｣

い｢赤貝がいいな｣

｢貝って自分から食べようかなって思ったこと少ないかも。美味しいの？｣

い｢んー、大人の味かな｣





いちはちさんは確かに皆に比べたら少し大人なのかもしれない。食の好みや落ち着きが違う。小骨が食べられないから鰻をあまり食べないしるこさんや、サーモンばかり食べるかるてっとさんとはちょっと違う雰囲気がある。





｢大人かぁ｣

い｢まだしるこちゃんとかかるてっとさんには分からないのかもしれないけどね｣





そう言ってニコニコお寿司を食べるいちはちさんは、可愛い大人にしか見えない私はまだ子供なのだろうか。

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