とおくてちかい。 (ページ10)

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好きになってほしいとか、わたしに振り向いてほしいとか、思ったことはあるし、実際そういう下心もあった。
でもそれは御幸さんに近づけて、わたしをちゃんと認識してもらってからだって思ってた。

覚えられたことは嬉しい。近付けたことも嬉しい。
…こんな覚えられ方も認識のされ方も想像していなかったけど。

「……なに、言ってるんですか…?」

足りない脳で必死に考えた。
回るはずもない頭もフル回転させた。

「ははっそりゃあな。冗談って思うよな。」

御幸さんは軽快に笑い飛ばして、真剣な顔を隠した。

「冗談じゃないなんて信じられません…
　だって御幸さんモテるし。」
「なに。キスでもすれば信じてもらえるの?」

そういうところだ。
そんなことをしたって簡単に信じられるわけがない。

それに、すぐにキスするだなんて考えに至るのなんて、慣れていないと出来ない。

わたしばかりが余裕なくから回っている。

「Aちゃん。」

名前を呼ばれても、思わず顔を下に向けてしまう。
下を向いたら、御幸さんはわたしの顎を上げた。