とおくてちかい。 (ページ7)

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「あのー、一也さん?」

そう口を開いたのは日葵ちゃん。

誰もいないと思っていたらしい御幸さんは、そう声をかけられたことで面食らっていた。

「一也さんに会うと、好きだなあって思っちゃうや…」

日陽ちゃんは背を向けて肩を震わせる。
御幸さんのことが好きだった、と過去形で話すけど、本当はまだ好きなんじゃないだろうか。

御幸さんは春市のスマートフォンをわたしに手渡すと日陽ちゃんに近付いた。

御幸さんから顔をそらそうとする日陽ちゃんだったけど、震える肩を優しく包み、自分のほうへ向けると耳元で何か呟いた。

最初こそ涙を流した日陽ちゃんだったけれど、最終的には笑顔を見せた。

「さて。Aちゃん。」

御幸さんはつぶやくように言うと、再びわたしの元にやってきた。
その距離はキスでもするんじゃないか、というくらい顔を近づけてきた。

「そんなに驚かないで。
　俺が言ったこと、覚えてる?」

好きにさせる…的なあれを言っているのだろうか。

「思い出した?あれ、本気だからね?
　今は本気でAちゃんを惚れさせたいし振り向かせたい。」