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#66 ページ17


「今日はせっかくだし手でもつなごうぜ?」

いつものような笑顔で御幸さんはわたしの手を取り歩き出した。

手をつないだまま電車に乗って町へ繰り出す。
緊張しかなくて、肩など変なところに力が入ってしまう。

そんなわたしを見て、御幸さんは、ちょっと木陰にでも行こうか、と提案しそこへ連れて行ってくれた。

辺りは薄暗くなってきた。
秋だからなのかわからないけれど、すこし肌寒い。夕方にもなってきて周りには誰もいない。

「なあ高村。
 やっぱりまだオレのこと信じられない?」
「………。最初に言おうって決めたときは、ちゃんと聞いてくれてちゃんと断ってくれるかなって思ってました。今もこうやって歩いているのが嘘みたいです。
 片思いでも憧れでも何でも、好きでいる間はその人のことを考えるから。だから信じる信じないのことじゃないよなって。」

気分は晴れやかだった。
そんなわたしをみて、御幸さんはきつく抱きしめた。

首筋に吐息がかかってくすぐったい。
そんな風に思っていたら、顔と顔を合わせて唇に迫ろうかというところまでいった。

「嫌がらないんだな。」
「わたしは御幸さんがやっぱり好きだから。それなのに嫌がって後悔するのは自分だから。」

わかった。
と少しいたずらっ子のような笑みを浮かべ、消えてしまいそうな、掠れた声でそう呟くと、そのまま唇への口づけをした。

肌寒いなんて忘れてしまうくらい、暖かい気持ちでいっぱいだった。

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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月24日 14時

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