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どうして御幸さんはわたしなんだろう。
かなり読み込んでいて、ボロボロな雑誌を女々しくずっと持っているような、変なやつなのに。
どうして御幸さんは…。
「そういうの今日はダメ。
今日の高村は学校にいる高村じゃないから。」
「………どうして御幸さんはわたしなんですか。」
「……高村は。」
少しの沈黙のあと大きく息を吸うと、御幸さんは淀みのない言葉で伝えた。
「高村は野球を知らないからって言った。そんなやつはグラウンドにも球場にも行っちゃいけないんだとも。野球を知らないのは、いっちゃいけない理由にならねぇだろ?
沢村や降谷、ほかの部員のように野球がしたくて県外から来るやつはいるけど、その人を追いかけて高校決めて、親元離れて一人暮らし、なんて…なかなかいねぇよ?」
少し微笑み、そこでまた大きく息を吸うと、こう続けた。
「高村は今、目の前にいる、この俺を追いかけて青道まで来たじゃねぇか。そんなこと出来るのなかなかいねぇよ。
たしかに最初は単なる興味だったよ。でも、気になって探したり、小湊と話してんのとかすげー嫌だったし。そう気が付いたらどんどん俺は興味だけじゃなくなっていった。」
それがAちゃんだったんだよ、
そこまで言った御幸さんはわたしの目の前に来ていた。
御幸さんの真っ直ぐな表情から目が離せなかった。
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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月24日 14時