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#65 ページ16


どうして御幸さんはわたしなんだろう。
かなり読み込んでいて、ボロボロな雑誌を女々しくずっと持っているような、変なやつなのに。
どうして御幸さんは…。

「そういうの今日はダメ。
 今日の高村は学校にいる高村じゃないから。」
「………どうして御幸さんはわたしなんですか。」
「……高村は。」

少しの沈黙のあと大きく息を吸うと、御幸さんは淀みのない言葉で伝えた。

「高村は野球を知らないからって言った。そんなやつはグラウンドにも球場にも行っちゃいけないんだとも。野球を知らないのは、いっちゃいけない理由にならねぇだろ?
 沢村や降谷、ほかの部員のように野球がしたくて県外から来るやつはいるけど、その人を追いかけて高校決めて、親元離れて一人暮らし、なんて…なかなかいねぇよ?」

少し微笑み、そこでまた大きく息を吸うと、こう続けた。

「高村は今、目の前にいる、この俺を追いかけて青道まで来たじゃねぇか。そんなこと出来るのなかなかいねぇよ。
 たしかに最初は単なる興味だったよ。でも、気になって探したり、小湊と話してんのとかすげー嫌だったし。そう気が付いたらどんどん俺は興味だけじゃなくなっていった。」

それがAちゃんだったんだよ、

そこまで言った御幸さんはわたしの目の前に来ていた。
御幸さんの真っ直ぐな表情から目が離せなかった。

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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月24日 14時

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