とおくてちかい。 (ページ11)

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。
「………っ」

ときが止まった。
そしてわたしは涙が一筋に流れていた。

本当に、キス、された。

事故のようなもの。
本当にそれくらい軽くて一瞬だった。

「……わりぃ。泣かせるつもりなんてなかった。」

御幸さんは距離を取って離れると、辛そうな顔をした。
そして何も言わず、背を向けて戻ろうとした。

「待って…」

と声をかけ、歩き出した御幸さんの背中を掴む。

「全然嫌じゃなかった…。すみません。」

恥ずかしさはもちろんある。それでも伝えなくちゃって思った。

最初に言おうと決心したとき。
ちゃんと聞いてくれて、ちゃんと断ってほしいだなんて思っていたけれど、今は絶対に断られたくない。

「好き、なんです、御幸さんが好きなんです…。」

御幸さんはモテる人だから。かっこいい人だから。
誰かしらからか告白されていて、差し入れだってもらっている。

でも、もう、それを誰からも言ってほしくない。
御幸さんが聞いてほしくない。

そう感じると、目に溜まった涙が頬を伝った。