すきになる日 ページ1
見栄を張ってメイド服なんて着なければ良かった。
なんだこれ、スースーしている。
少しの後悔とかなりの気恥ずかしさで、逃げ出したくなった。
「Aちゃん。待ちくたびれた。」
その声はどこか安心感があった。
「……やっぱ高村は…このほうがいいよ」
本心なのか、はたまたからかっているだけなのか、全然わからない。分からないけど、優しく微笑んだその表情をみて、言われた言葉は嬉しかった。
接客をしようと顔を上げると、御幸さんに腕を引かれた。
そして耳元で
「今から璃空ちゃんはオレと逃げるの」
なんて、よく意味の分からないことをいう。
この状況を考えようとしているのにうまく頭が働いてくれない。
その瞬間御幸さんにひょいっと抱えられ、教室から出る。
▷
そして連れてこられたのは屋上。
昼間とは違い、日も傾き始めて幾分涼しい。
「なあ。何を言おうとしてたんだ、昼」
わたしをおろしながら御幸さんは問う。
大きく息を吸うと、わたしは覚悟を決めて言った。
「わたしは御幸さんがすきです。
本当は、ずっと憧れのままでいたかったけど、御幸さんのこと見ていくうちに憧れだけじゃない気持ちが大きくなりました。でもそれはすっごく苦しくてすっごく辛くて…敢えて知らないフリしてました。」
目に浮かんだ涙を、流さないように、耐えながら伝える。
「きっと御幸さんじゃない別な人を好きになっていたら、こんなに不安な気持ちを抱えなくて、好きな人のことでたくさん泣いたり、悩んだりなんて、しなかったのかなって少し思います。」
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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月24日 14時