とおくてちかい。 (ページ46)

今日:14 hit、昨日:36 hit、合計:1,651 hit

#46 ページ46

。
「今日どこに行っても人で溢れてて騒がしいのに、屋上が一番静かだなんて珍しいよな。静かすぎて2人っきりの世界になっちまったみたいだな。」

…………ふいにそんなことを言うのはやめてほしい。

この人の一言一言で一喜一憂して、照れたり泣いたりバカみたい。
なんでこの人なのだろう。
どうして好きだ、なんて感情が芽生えてしまったのだろう。

「おーい高村ー?
　おーい。………Aちゃん。」

名前を呼ばれてドキッとした。変な声も出てしまっていたかもしれない。
振り返ると、すぐそこに御幸さんの影が見えた。

少し目線を下に動かした御幸さんと、視線がぶつかる。

「…なんでちょっと泣きそうなんだよ。
　つうか俺と会う時いっつも悲しそうな顔してるよな、お前」

御幸さんとぶつかった視線を、ものすごい勢いではずした。

このままいっそ、言ってしまおうか。
そしたらちゃんと聞いてくれて、ちゃんと断ってくれるだろうか。

いうなら今しかないと思った。
2人きりのこの瞬間に。

そう決意したとき、休憩の終わりを告げるアラームが鳴った。

「……何か言おうとしてたか?
　終わったらまたあとで話そうぜ。」

と御幸さんは手を振る。

心の中で、ごめんとありがとうを繰り返しながら教室へ戻った。