とおくてちかい。 (ページ45)

今日:9 hit、昨日:36 hit、合計:1,646 hit

#45 ページ45

。
「先にごはんたくさん買っていいですか。」

御幸さんの伸ばした手を言葉で制する。
いつの間にか御幸さんがわたしの財布を持ってくれていた。

いくつかの模擬店を周り、あまり並ばず買えそうなところに行く。

まだ買うのかよ、と呆れ気味だったけど、ずっと財布と買った荷物を持ってくれた。

「朝も早かったからお弁当作る時間なかったし、朝ごはんも少なかったので、お腹すいて倒れそうなんです。」

別に着いてきてくれなくてもいいのに。
チラッと横目で見てみると楽しそうな表情を浮かべる御幸さんがいた。

買ったものをもち、2人で向かった先は屋上だった。
誰もいない、たった二人だけの空間。

「文化祭の間はどこに行っても人で溢れてて、せっかくの休憩なのにゆっくりできねぇだろ?」

御幸さんは屋上の日陰になっているところに寝転んだ。お前もこいよ、高村。なんていって隣を指さす。
御幸さんのいるところまで早歩きをする。

もういっそのこと伝えてしまおうか。

だなんて。

誰もいないのに、誰かに背中を押されることを待っている。
誰もいないのに、この瞬間を見られることが嫌だと感じている。

屋上(ここ)にはわたしと御幸さんの2人きり。