とおくてちかい。 (ページ34)

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。
「いいじゃん。すきになったら。」

そんな風に言われて、顔を赤らめる。
帽子を目深に被り直す。

あれ、顔赤いじゃん。だなんて言って御幸さんは顔を覗き込む。
……そんな状況を知っているくせに。

「もう…やめてください…」

そう、涙を堪えるように、消えそうな声でいうと逃げるようにその場から立ち去った。

走り去るわたしの背中を見つけた春市が何かを言っている。

走り回って遊んでいたあの頃。走るのには多少なりとも自信はある。だけど、そこはやっぱり男女の差。それに相手は現役野球部。
走り切れるわけもなく。

「待ってよ!Aちゃん!」

気が付いたら声はわたしのすぐうしろで聞こえ、春市に肩を掴まれていた。

「なんで…なんでまた逃げるの。」
「好きになっちゃったもん…もう抑えきれないよ…会いたくないよ…」

言葉はどんどん小さくなり、自分の靴の先をみつめる。

「Aちゃん……」

そっと近づき春市はわたしの頭を撫でてくれた。

「Aちゃんが青道に来たのは、御幸先輩の背中を追って、だよね。野球知らないからって避けようとしてる。Aちゃんが決めたことならそれでいいと思う。
　それなのに、どうしてあんなに寂しそうな表情(かお)を見せるの?」