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球場へ向かうと強面の先輩とピンク頭の先輩が、二人同時にこちらを振り向き、手招きした。
「久しぶりじゃねーか。あれからどうした。ちゃんと帰れたか?」
優しく尋ねてくれた、強面先輩は伊佐敷純さんと言うそうだった。
大丈夫でした、と伊佐敷先輩に頭を下げた。
伊佐敷先輩にだけだったのが良くなかったのか、何故かすごく痛い視線を感じる。
視線の痛さに耐えられず、そちらに目を向けてみると、暗いハイライトが入ったニコニコ顔が見えた。
伊佐敷先輩の隣から無言で圧力をかけられている。
視線は痛かったけれど、気を取り直して試合を見てみる。
試合は全然、わからない。今、相手チームが攻めているのは分かる。
離れてみてから金丸と東条くんの有り難さが身に沁みた。
どうしたらいいか、野球のことを教えてほしいと思いながら、視線の先へ顔を向けてみる。
もう刺すような視線ではなかったものの、ニコニコとした顔からは相変わらずの凄味がある。
こんな簡単なこと、聞いたら絶対にまた意地の悪い事言われるに決まっている。
そう思ったのに、仕方ないなぁ、なんて言いながらも懇切丁寧に教えてくれた。
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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月19日 14時