とおくてちかい。 (ページ3)

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「Aー?
　いるんだったら返事しなさいな」

お母さんにそういわれ、気のない返事をした。
部屋でその特集記事を眺めながらうとうとしていたせいもあるだろう。おかげで顔が少し痛い。

「あら、青道?
　なんだ青道に行きたいの?」

我が家は兄妹が多い。歳の離れている末っ子のわたしはすきなように生きなさい、という主義の中育てられた。

「ん～…ここどんな学校か知らないしなあ…」
「あら、この特集されている子かっこいいじゃん。野球、興味ないくせに」

お母さんに雑誌を見られ軽く笑われた。

「青道高校、東京にある野球強豪校よ。私立だし野球強豪校だからいろんなところから生徒がいるって話よ。
　………あ、野球に興味ないのにわたしなんかが、とかって思ってるでしょー。
　接点はまったくないかもしれないけど、Aの好きにすればいいんだから、ここにいくって決めてもいいんだよ」

お母さんのすこし寂しそうな笑顔を見逃したわけではなかった。
だけど、わたしは少しでもこの人の近くにいたいと感じたその瞬間、黙っていた感情がうるさく主張をし始めた。