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こんな近くに御幸さんがいるだなんて、にわかに信じられない。
ずっと雑誌を持ってるだなんて、女々しいと思われたかもしれない。言葉の端々からも、少し馬鹿にしているような言葉も感じられる。
絶対嫌味なことを言っているはずなのに、嫌に聞こえないのだから不思議だ。
御幸さんがこんなに近くにいるだなんて。
手を伸ばせば届く距離にいるだなんて。
こんなことが起きている未来なんて想像していなかった。
雑誌の中の遠い存在であってほしかった。
「ここまで来れば帰れるか?
やっぱ女子一人ってのも怖いし送っていこうとも考えたけど、大会近くて。ごめんな。気を付けて帰れよ。」
御幸さんはそう言うと、手をひらひらと振った。
まだ言っていないことがある気がする。言わなきゃいけないこと。
うまく考えがまとまっていないのに、「あの。」と声をかけた。
「高村Aっていいます、名前」
近くにいないでほしい、だなんて思いながら、御幸さんに覚えてもらいたいなんて、虫が良すぎる…矛盾しまくりだ。
(御幸さんの印象に残っていたらいいな。)
軽やかなスキップをしながら帰路へついた。
〜それから距離が今よりもぐっと近づくのはもうすこしあとの話
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作者名:ゆめみるきのこ | 作成日時:2023年8月19日 14時