アナベルの紫陽花 (ページ38)

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それが1回目。

2回目はその年の12月だった。

仕事納めのその日に深澤さんと翔太さんとあの喫茶店へ行った。

店員さんは、お酒強いらしいけど、翔太さんはものすごく弱い。
そして深澤さんは、好きだけど強くはない、って店員さんが教えてくれた。

わたしはまだ20歳になっていなくて、お酒は飲めないからもちろんソフトドリンク。

周りもみんな、合わせてくれた。

店員さんが実は翔太さんと幼なじみで、りんかとも知り合いだったことには驚いた。

そして、この店で、深澤さんが働いたことがある、と聞いたときはもっと驚いた。

「大学途中で辞めちゃった話したでしょ?
　どうしても親に最初は言えなくてさ。学校あるように偽装して。ま、結局はバレちゃったけどね。偽装するために働いてたのがこの店。」

深澤さんのギャルソン姿を想像して、少し照れる。

このお店は、思い出がたくさん詰まった素敵なお店、ということを勝手に考えて、勝手に納得したら急に力が抜けて。

気が付いたらわたしはその場で寝ていた。

二人は帰ったらしいけど、深澤さんはわたしの側にずっといてくれた。

「Aちゃん起きた?
　舘さんから鍵受け取ってるし、帰ろうか。」

自然に深澤さんはまた手を差し伸べた。

そのまま深澤さんの家へと行ったわたしは、
あまりはっきりしていない頭で、着替えもメイクも落とし、きちんと眠った。

………とこれが2度目。

こんな経緯があるから、深澤さんは阿部さんと一緒に行くのが心配らしい。