アナベルの紫陽花 (ページ5)

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どうやら寝ているこの間に誕生日を迎えていたみたい。

「Aちゃん、起きたね。
　ケーキ、食べられそう?」

小さく頷くと深澤さんは厨房に入り、冷蔵庫をあけた。
大きなホールサイズのチーズケーキだった。

チーズケーキには刺すことは出来ないから、とチーズケーキの脇にプレートが置いてある。

『AちゃんHappy Birthday』

好きな人から祝われるのももちろん嬉しい。
ほかの人が祝ってくれる誕生日も、すごく嬉しい。

「Aちゃん?泣いてるの?」
「うれしいんです…皆さんと知り合えて、本当に良かった……」

深澤さんは微笑みを浮かべると、ケーキを切って眼の前に置いた。

「残りは持って帰ろうか。」

そういうと深澤さんは「舘さんから預かっていた」と、誕生日と名前の入ったワインを持ってきた。

ワインが作られた年はわたしの誕生日と同じで。

「これも持ってかえろ。
　飲むのは俺の家で、なーんて。」

深澤さんはワインボトルを箱にしまうと、冷蔵庫からシャンパンを持ってきた。

「いきなりワインはハードル高いから。」

シャンパンをグラスに注ぐ深澤さんの慣れた手つきをみて、働いていた姿を容易に想像できた。