アナベルの紫陽花 (ページ23)

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終業を告げるチャイムが鳴った。
明日やることリストをメモに残し、パソコンに貼り付けておく。

ちらりと目をやると、深澤さんはまだ仕事をしていた。
………わたしが手伝えることは…ない。

「深水さん?」

不思議そうに見つめる目黒さん。
その表情にはっとする。

「行きましょうか。」

目黒さんと並んでその場を後にすると、懐かしい人と鉢合わせた。

阿部さんは昨年異動した。
会社自体は全く同じなのに、部署が違うから、
ほとんど会わず1日が過ぎてしまう。

「営業部の阿部亮平といいます。深水さんは最初に配属されたときの教育係でした。」

阿部さんは目黒さんにしきりに教えるのがうまいんだ、と話していた。
あのときはわたしも2年目で、向き合う時間はあったけど、
今では目の前の仕事に追われて向き合えない。

年度初めで忙しくてあまり教えてくれなかった深澤さんの気持ちが今はよく分かる。

長いこと同じ係で仕事をしていると、丁寧に伝えようとできなくなるらしい。

「目黒さんにも、もっとちゃんと向き合います。」