アナベルの紫陽花 (ページ3)

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「手伝ってくれてありがとうございました!」

首元の髪を束ねると首元でチェーンが見えた。

普段、アクセサリーを付けないことを深澤さんは知っている。
少しだけ目を見開いて、深澤さんはふっと息を漏らした。

「じゃ、俺はこれで。
　深水さんも、帰るよ」

深澤さんはわたしの肩をぽんと叩くと、鞄を持っていち早く会社を出た。

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久しぶりに残業もせずに職場をあとにした。
外に出ると深澤さんが先に待っていた。

「おつかれ。
　…いこっか。」

会社の近くであったり、周りに人がいたりしたら、絶対に深澤さんは腕を引かない。
名前ももちろん呼ばない。

「Aちゃん。今日、ネックレス付けてるんだね。」

首元の髪を分けたときに深澤さんは分かっていた。

「いつもは名前呼ばないのに。」
「たまにはいーでしょ。
　今日はAちゃんの特別な日なんだから。」

そんな話をしながら歩いていたら、目的地へはすぐに到着した。

ここの喫茶店はもう何回目なんだろう。

あまり飾らない外観も、落ち着いた内装も、目隠しになる作りも。

店員さんともすっかり顔見知り。

「深水さん、ふっか、いらっしゃい。」