思い出のオンボロバイク《龍宮寺堅》

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『いってきまーす』



と、家を出る。

父は既に仕事に出ていて、母は仕事に出る前でバタバタしていて返事はなかった。
車庫に停めてあるオンボロバイクにエンジンをかければ、ポツリ…とミラーに水滴が落ちた。
黒い雲がチラチラ見える空は、今にも降り出しそうだったので、今日はバスで行こうと傘を持って歩き始める。

歩いて5分、いつものコンビニより少し手前にあるバス停は同じように傘を持つ人がチラホラと並んでいた。
到着したバスに乗り込んで、向かうのは図書館。
過去問やら参考書やらを持って着いたソコは既に自分と同じような境遇の学生が何人か勉強に励んでいた。

窓際の席に腰掛けて、過去問を開き解いていく。
ポツポツと降っていただけだった雨が、サーっと本降りになってきて、バイクで来なくて良かったと思った。
そして、シャーペンを置き、携帯で確認するのは天気予報。
過去問の答えより、週末の天気が気になった。



『曇り…のち、晴れ………』



浴衣を着て行っても良いだろうか、下駄を履いて痛くなったら迷惑になるか、髪型はどうしようか…
気付けばネットで浴衣を検索したり、髪型を検索したりと、勉強に励む学生達に紛れて１人携帯とにらめっこをしていた。



『げっ、もうお昼…』



午前中に出来たのは過去問がたったの1ページ。
髪型は可愛い動画を見つけて、浴衣は去年の物を自分で着付けしようと何度も動画を再生し、ノートに授業より細かく内容を記録していた。



『とりあえず、お昼食べて午後からは…！』



図書館に隣接するカフェで適当にサンドウィッチとコーヒーを購入し、天気が良ければ中庭で食べるのだが生憎の雨。
止む様子のない雨を見ながら飲食フロアでサンドウィッチにかぶり付いた。

ピロン！っと子気味の良い音はメール受信の連絡。
誰からかな？とコーヒー片手に携帯を開くと私の顔は一気に綻んだ。



ー雨降ってるけどバイクで行ってねぇよな？ー



龍宮寺君には直して貰ったバイクで図書館に通っている事を伝えていた。
今日の天気を見て、心配してくれたのかと嬉しくなって調子に乗ってそう返信してみれば…



ーちげーよ、バカ。お前抜けてっから雨でもバイク乗りそうって思っただけー



抜けてる…何処が？と思いながら、直ぐにきた返信に喜びは隠せなかった。





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