思い出のオンボロバイク《龍宮寺堅》

2 ページ2

.



「すげーな、化石じゃねぇか」



オンボロバイクを見た彼はそう言った。
店内に運ばれたオンボロバイクは彼の手で治療されていく。
カチャカチャと弄る様を見るのが楽しくて見つめていれば、見てて楽しいか？と自身の動く手元を見ながら彼が言う。



『あ、すいません、バイク…見てても良いですか？』
「好きにしろ」



こちらを見ずに言った彼に頭を下げてズラリと並べられたバイクを見ていく。
特別バイクが好きだとかそういった事はなかったが、見たこともないような厳ついそれらのボディはピカピカと光っていた。
そんな中、壁のボードに貼られた沢山の写真。
刺繍の入った服に身を包んだ目付きの悪い男達。
顔を腫らして絆創膏を貼って、鼻血を垂らしているにもかかわらず笑顔で写る彼らの中に、今オンボロ号の治療をしている彼の姿もあった。



『東京……まん…じ？』
「東京卍會、東卍な」



カッケーだろ、と言いながら写真を見ていた私の後ろに現れたタトゥーの彼は"東京卍會"と書かれた旗を持って写っている写真を指差した。



『ヤンキー？』
「否定はしねぇが、そこらの奴等と一緒にすんなよ」
『すいません…』
「お前のバイク、直すの時間かかりそうだ」



そう言いながらオンボロ号の元へ案内する彼に付いて行く際に、横目に見えた可愛らしい女の子と写る写真。
へぇ、あんな可愛い彼女いるんだ……と思いながら、揺れる金の三編みに付いて行った。



「部品注文すっから1週間はかかる」
『そうですか…』
「とりあえず今日は迎えに来てもらえよ、連絡先だけ教えろ、直ったら連絡する」
『はっ！携帯……！』
「あ"？」




.

2-2→←1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す