ストロベリースカッシュ《三ツ谷隆》

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『隆！』

「おー、良いじゃん、似合ってる」

『そお？新人デザイナーが作った服らしいんだけど…』

「マジかよ、そのデザイナー天才だろ」



インパルスに凭れて待っていた三ツ谷。
今日の服を彼の前で着るのは初めてで。
二人して悪ノリして笑いあった。



『今日、何処行くの？』



行き先を聞かされていないデート。
バイクの後ろに乗って走行する事、数十分間。
デートスポットとは言い難い街並みに私は少し心配になった。
久々のデートだからショッピングモールに行ったり映画を観たりランチしたり…そんな感じかな？とワクワクしていたのに、着いた先は造りこそ可愛らしいけれど二階建てのハイツ。

駐車場に当たり前のようにバイクを停めて、私の手を引いた三ツ谷が取り出したのは鍵。



「まだ何もねェんだけどな」



って、開けた扉の先には本当に何もない部屋が広がっていた。



『何？ここ』

「自宅兼仕事場？」

『え、借りたの？』

「服が売れてさ……だから、勢いっつーか？仕事場も何もねェってダセェだろ？」



家も出たかったしなー、と言いながらまだ何もない部屋を覗いていく三ツ谷。



『服が売れたって……』

「おー、あのワンピースな」



三ツ谷のデザインを気に入ってくれた人のリクエストで作ったと言う、あのワンピース。
売れるのは嬉しいけど、あのワンピースは私だけの物にしたかったな…なんて。



「大丈夫だよ、形は一緒だけどイメージ変えてるから、全然ちげーし」



アレはお前だけのもんだから



って、めちゃくちゃ笑顔で言う三ツ谷。



『ねぇ、隆……私も……』

「ここ、寝室にしよーぜ、二人用のでっけぇベッド買ってさぁ……で、あっちが作業部屋で、この辺にテレビか？」



当たり前のように私がこの部屋で一緒に暮らす事を想定している三ツ谷の言葉にじんわりと涙が溢れる。



『何で分かるの？』

「お前の事、中学からずっと見てんだから当たり前だろ」



今すぐお嫁さんにして！ってプロポーズしたくなるその言葉。
きっとそんな事を考えてるって事も三ツ谷はお見通しで、ギュッて後ろからハグされたと思ったら、あの日みたいに頬に軽く触れる唇。
そして、ウェディングドレスはオレが作るから…とか耳元で言われちゃうと、私はヘナヘナの軟体動物みたいになってしまうんだ。








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